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野球肘

1. 投球動作
投球動作は4相もしくは5相に分ける事ができます。ここでは5相に分けて説明します(図.1)。構えから投球動作に入り、非投球側の足が最高地点に達した時点までをワインドアップ期、投球方向への移動が開始し、踏み込んだ足が完全に接地する時点までを早期コッキング期、ステップ足が接地してから投球側の肩関節が最大外旋するまでの動作を後期コッキング期、投球側の肩関節が最大外旋(肘が最高位に達し、前腕が後方に倒れる事)した位置から投球方向に加速し、ボールリリースまでの時期をアクセラレーション期、リリース以降から終了までをフォロースロー期といいます。
投球動作は全体で1.4~2秒ほどで行われる非常に速く、なおかつ下肢~体幹~上肢へと効率良く力を伝達する全身連鎖運動です。
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.1投球動作の相分け

2.投球障害

健全な投球動作では、下肢から体幹へ、体幹から上肢へと効率良く力が伝達されます(図.2)。ところが下肢や体幹の機能異常があると運動連鎖を破綻させ、肩や肘関節に過負荷がかかるようなフォームとなり、その状態が繰り返される事で障害が出ます。投球動作における障害は、肩や肘関節自体の問題から起こる事はほとんどありません。

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図.2 投球動作における運動連鎖

3.野球肘
【病態】
野球肘とは、野球主に投球動作によって生じた軟部組織(筋、腱、靭帯、神経)および、骨軟骨の外傷・障害の総称です。野球肘は部位によって、内側型、外側型、後方型に分類されます。

・内側型:アーリーコッキング期~アクセラレーション期の切り返しに相当する肩関節が最大に外旋する時期に肘関節への外反ストレスが増大し、内側上顆、内側側副靭帯に牽引ストレスが増加する事で肘内側部に生じる病変です(図.3,4)。主に、内側上顆剥離骨折、骨端線離解、内側側副靭帯損傷、尺骨神経障害などがあげられますが、年齢によって破綻部位は異なります。これは、年齢により内側支持機構の最脆弱部位が異なるからです。13~14歳頃までは内側上顆周辺の障害、15~16歳までは鉤状結節付近の障害、17歳以上では内側側副靭帯損傷が主に生じます(図.5)

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図.3 アクセラレーション期の肩関節外旋と 肘関節の外反

図.4 野球肘の内側型発症メカニズム

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 .5野球肘内側型の年齢による変化

・外側型:外側型も内側型と同様に肩関節最大外旋で肘の外反ストレスが増加し、肘外側部の腕頭関節が圧縮・剪断ストレスに繰り返しさらされる事で上腕骨小頭の変性、壊死が起こる病変です(図.6,7)。主に、離断性骨軟骨炎(OCD:osteochondritis dissecans)、滑膜ひだ障害などがあげられます。OCDは重症度が高い事で知られており、レントゲン写真で、初期(透亮期)、進行期(分離機)、終末期(遊離期)に分類する事が出来ます。初期例では90、進行期では約50で保存療法により修復がみられますが、終末期では手術療法が選択される事が多いです(図.8

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図.6 アクセラレーション期の肩関節外旋と 肘関節の外反

図.7 野球肘の内側型発症メカニズム

 

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図.8 野球肘外側型のレントゲンによる分類

・後方型:アクセラレーション期~フォロースロー期で肘後内側部に外反・伸展ストレスが増加し、肘頭が上腕骨に衝突する:事で生じる病変です(図.9)。主に、肘頭骨端線離解、閉鎖不全、骨棘形成、疲労骨折などがあげられます。

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図.9 後方型野球肘のメカニズム

【診断】
・内側型
投球時の痛み、肘関節の内側部の圧痛、徒手による外反ストレスにより痛みがある場合は内側型の野球肘を疑います。レントゲン、MRIで、上腕骨内側上顆の靭帯付着部から剥離した小さな骨片や、内側側副靭帯損傷を認めることがあります。
・外側型
投球時の痛み、可動域制限、上腕骨小頭(肘関節外側部)に圧痛がある場合は外側型の野球肘を疑います。症状が進行すると、引っ掛かり感やロッキング(肘関節がある角度で動かなくなること)が生じます。OCDの病巣は、初期にはレントゲン上では透亮像(骨の陰が薄くなった状態)として、進行すると分離像、遊離像(病巣部の骨軟骨片が上腕骨小頭から分離、剥がれる状態)として表されます。また必要に応じて、MRIにより、病巣の壊死の程度、軟骨変性の状態を評価します。

【治療】
肘関節の炎症がある時は投球禁止と局所の安静を指示させて頂きます。安静は内側型では2~3か月、外側型では6ヵ月以上要し、場合によっては1年以上の長期にわたり投球動作を禁止することもあります。痛みが強い時には炎症を抑える目的でステロイド注射や内服を実施する事もあります。日常生活でも重量物の把持など、投球以外の動作にも注意して頂きます。
保存療法が選択された場合は、理学療法士が患者様とマンツーマンで治療させて頂きます。治療内容は、肘関節周辺のコンディショニングはもちろんですが、上記の投球動作のところでも述べたように、投球動作における障害は、他部位の影響も考えられるため、全身の評価が必要です。その中でも肩甲胸郭関節、体幹、股関節の機能障害による影響が多くみられます。これらの関節周辺の筋肉の硬化、弱化により、非投球側の足が接地した際に体が前に突っ込んだり、投球時に体の開きが早くなったり、肘が下がったりして、肘関節に負担が生じます。障害の原因となっているこれらの関節機能を評価し、本来の動きを取り戻していく事で肘関節にかかる負担を最小限にし、投球時の痛みを解消していきます。また必要があれば、患者様本人と保護者様や野球の指導者様とよく相談し、投球動作の指導も行わせて頂きます。
さらに剥離骨折や骨端線理解で転移が大きい時や離断性骨軟骨炎の終末期など手術的治療が必要な場合は、上肢の専門医を紹介いたします。

【参考文献】
1)    岩堀裕介 肘関節内側痛の診断.臨床スポーツ医学 2012,Vol.29 No.3:245-254.
2)    戸野塚久紘,菅谷啓之 内側障害に対する積極的保存療法. 臨床スポーツ医学2012,Vol.29 No.3:255-260
3)    鈴江直人,松浦哲也,柏口新二・他 上腕骨小頭離断性骨軟骨炎に対する保存療法. 臨床スポーツ医学2012,Vol.29 No.3:261-266
4)    松尾知之 指導者の経験知とバイオメカニクス研究の融合点から探る. 臨床スポーツ医学2012,Vol.29 No.3:313-319
5)    Neumann DA 嶋田智明,平田総一郎(監訳) 筋骨格系のキネシオロジー.医歯薬出版 2005;120-127.
6)    福林徹,小林寛和,山口光圀 投球障害のリハビリテーションとリコンディショニング.文光堂 2010

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